美容院 Salon Aube 変革の物語 〜AIと共に歩む、地域で一番愛されるサロンへの挑戦〜(3)
SNS運用に挫折した美容室オーナーがAIを参謀に、情報発信を効率化。戦略立案から投稿ネタ、魅力的な文章、動画台本までAIが自動作成。具体的なAIへの指示や生成結果をご紹介します。
はじめに
前回の記事では、AIとの共創によってSalon Aubeの新たな価値を具現化しました。お店の強みと顧客ニーズを掛け合わせ、客単価向上の切り札となる新メニュー「オーダーメイド髪質改善スパ・トリートメント」を開発。AIのサポートにより、ネーミングから価格戦略まで、自信を持ってお客様に提案できる準備が整いました。
しかし、どれだけ素晴らしいメニューが完成しても、その魅力がターゲットであるお客様に届かなければ意味がありません。
今回の記事では、多くの個人経営者が壁にぶつかる「情報発信」の課題に挑みます。かつてSNS運用に挫折した佐藤店長が、AIをパートナーにすることで、いかにして未来のお客様との接点を創り出していくのか。その具体的なプロセスを解説していきます。
シミュレーションの舞台
会社名
Salon Aube (サロン・オーブ)
概要
開業10年を迎える、地域密着型の美容院。席数4席、スタッフ3名。丁寧な施術と落ち着いた雰囲気で長年の常連客に支持されているが、最近は周辺に新しいトレンドを取り入れたサロンが増え、競争が激化している。
登場人物
佐藤店長
自身もトップスタイリストとして現場に立つ、30代後半のオーナー兼店長。
技術には自信があるものの、時代に合わせた経営やマーケティングに課題を感じている。「今のままじゃダメだ…」と感じ、ITやAIの力で現状を打破したいと考えている。
悩み
常連客頼みで新規顧客(特に20代〜30代の若者層)がなかなか増えない。
客単価が上がらず、売上が頭打ちになっている。
SNS(Instagram)での情報発信が負担になっている。
何から手をつけて良いかわからない。
活用シーン3: 情報発信フェーズ - "未来のお客様"に想いを届けるSNS戦略
【お店の課題】
魅力的な新メニューはできたものの、佐藤店長の頭には新たな悩みが生まれていました。
「このメニューの良さを、どうすれば20代〜30代の女性に伝えられるだろうか…」。
過去にInstagramを始めたものの、「他のお店の投稿と比べて落ち込む」「何を投稿すればいいか分からず続かない」といった経験から、SNSに対して苦手意識を持っていました。このフェーズでは、その苦手意識を克服し、効率的かつ効果的にSalon Aubeの魅力を発信するための「仕組み」をAIと共に構築します。
【AI活用プロセス】
事前準備
これまでの成功体験を一過性のものにせず、今後のあらゆる施策の精度を高めるために、サロン経営の軸となる「ミッション」を、実際のデータに基づいてアップデートします。
活用する機能
クリップ機能 + ミッション編集
実行アクション
1.クリップに情報集約
まず、これまでのフェーズでAIと共に導き出した重要な発見や成果を『クリップ』に集約します。
- 佐藤店長の実行例
- 「ロコミ分析で見えたお客様の本音」「SWOT分析から明らかになったお店の強み」などを、「Salon Aube戦略メモ」のフォルダにクリップ保存していきます。

2.ミッションの見直し
次に、クリップに集めた客観的な事実(データ)を見ながら、最初に設定した「ミッション」の内容を再検証します。
- 佐藤店長の実行例
- 当初「20〜30代」と広く設定していたターゲットを、「特に髪への美意識が高く、本質的なケアを求める20代後半〜30代女性」と、より具体的に絞り込みます。
- 「オーダーメイドの髪質改善」という新メニューを、USP(独自価値提案)として強く打ち出す表現に修正します。
ミッションのBEFORE / AFTER
項目 | BEFORE (プロジェクト当初の記載内容) | AFTER (データに基づく再定義) |
ミッション名 | Salon Aube 再活性化プロジェクト | (変更なし) Salon Aube 再活性化プロジェクト |
ミッション・ビジョン (軸となる価値観) | 丁寧な仕事と落ち着いた空間で、 お客様に喜んでもらいたい。 長く愛されるサロンで ありたい。 | 私たちの強みであるマンツーマンの丁寧な対話を通じ、 お客様一人ひとりの髪の悩みに心から寄り添う。 その場しのぎの美しさではなく、 髪本来の健やかさを育む「髪の主治医」として、 地域で最も信頼される存在になる。 |
目的 (販促テーマ等) | 20代〜30代の新規顧客を獲得し、 客単価を向上させたい。 | 「オーダーメイド髪質改善」を事業の新たな柱として確立する。新メニューをフックに客単価を15%向上させ、Instagram経由の新規顧客リピート率80%以上を安定的に達成し、経営基盤を再構築する。 |
ターゲット | 近隣エリアに在住・在勤の 20代後半〜30代の働く女性 | 髪への美意識が高く、 本質的なケアを求める 20代後半〜30代の女性。 SNSで積極的に情報収集し、 繰り返すカラー等によるダメージを 根本から解決したいと願い、 信頼できるプロの提案を求めている。 |
コアメッセージ・USP (独自価値提案) | 大手にはない、 マンツーマンの丁寧なサービスが 強みです。 | 流れ作業の施術ではなく、 マイクロスコープ診断という客観的データに基づき、 あなたの髪質のためだけに調合する 完全オーダーメイドの髪質改善プログラムを提供。 「どうせ変わらない」という諦めを 「感動的なツヤ髪に変わる喜び」に変える体験こそが、 私たちの約束です。 |
AI活用による変化
最初に立てた仮説としての「ミッション」が、実際の顧客の反応という動かぬ事実に基づいて磨き上げられ、より精度の高い「サロン経営の羅針盤」へと進化しました。
このアップデートされたミッションを基準にすることで、今後AIに相談する活動(新たなキャンペーン企画やスタッフ採用の方向性など)において、AIからの提案がさらに的確で、ブレのないものになります。
Step 1: SNS運用の「設計図」を作る
まずはお店のInstagramアカウント全体の「コンセプト」と「投稿計画」をAIと考えます。
活用するAI
SNS運用戦略プランナー
実行アクション
事前に登録した「ミッション」を選択し、「SNS運用戦略プランナー」を起動します。AIはミッションで定義されたターゲットやUSPに基づき、Instagramアカウントの全体戦略を自動で立案します。
【佐藤店長の入力例:SNS運用戦略プランナー】
項目 | 入力ポイント | 佐藤店長の入力例 |
ミッション選択 | 事前に登録したプロジェクトの 「ミッション」を選択します。 | Salon Aube 再活性化プロジェクト |
プラットフォーム | どのSNSで情報発信を行うかを 選択します。 | |
運用期間 | これから立てる戦略を、 | 2025-09-01 - 2025-11-30 |
投稿数 | 運用期間中、どのくらいの頻度で 投稿を行うかを設定します。 無理なく継続できる 現実的な頻度を入力することが 成功の鍵です。 | 週4回 |
広告予算(任意) | 広告を利用する場合の 月間予算を入力します。 広告なしで始める場合は 空欄で問題ありません。 | 月10,000円 |
キャンペーン/特別施策(任意) | 特別な企画を考えている場合は 入力します。 | 新メニュー「オーダーメイド髪質改善スパ」導入キャンペーン(初回限定20%OFF |

AIが作成したSNS運用戦略の例
- 20〜30代の女性ペルソナを設定し、「時間効率+リラックス体験」というニーズを狙います。
- コンテンツは「ビフォーアフター」と「施術体験」のReelsを軸に、マンツーマンの信頼性と落ち着いた空間の価値を伝えます。
- 月1万円の広告予算とマイクロインフルエンサー施策で、地域内での認知をブーストし初期集客を加速させます。
- KPIはフォロワー増 (+800人) と月間新規予約30件に設定し、予約管理システムとインサイトで週次計測します。
- クリエイティブやCTAのA/Bテストを週次で行い、データに基づいたPDCAサイクルで運用を高速で最適化します。
Step 2: 投稿ネタの「無限生成」
戦略が決まっても、「具体的に何を発信するか」で手が止まっては意味がありません。「投稿のネタ切れ」という悩みをAIで解決します。
活用するAI
投稿案作成ワークフロー
実行アクション
「投稿案作成ワークフロー」に、「ミッション」を選択した上で、「髪質改善」「お家でのヘアケア」といったキーワードを入力します。AIはターゲットが興味を持ちそうな切り口で、複数の投稿アイデアを生成します。
【佐藤店長の入力例:投稿案作成ワークフロー】
項目 | 入力のポイント | 佐藤店長の入力例 |
ミッション選択 | 事前に登録したプロジェクトの 「ミッション」を選択します。 | Salon Aube 再活性化プロジェクト |
生成する投稿案のタイプ | 投稿の目的や内容に AIはこのタイプに合わせて、 | ブランド/サービス/商品/メニュー紹介 |
複数結果生成 | 一度に複数の投稿文案を 複数の案から最適なものを選んだり、 | 5 |
補足キーワード/参考情報 (任意) | 投稿に含めてほしい ターゲットに検索されやすい、 | 梅雨/湿気/髪の広がり/ |
内容の詳細(任意) | 投稿の元となる、 | 梅雨の時期に髪がまとまらずに悩んでいるターゲットに向けて、 |
プラットフォーム | 投稿するSNSを プラットフォームの |

AIによる投稿案の例
- アイデア1: 「朝3分でまとまる!時短・湿気対策ルーティン」
- アイデア2: 「手持ちのアイテムでできる広がりストップ術」
- アイデア3: 「実例で見る!梅雨のうねりを抑える髪質改善ビフォーアフター」
Step 3: 魅力的な投稿文を「瞬時に作成」
写真に合わせて文章を考えるのが一番時間がかかる作業です。その作業をAIに任せ、クオリティとスピードを両立させます。
活用するAI
投稿文作成ワークフロー
実行アクション
Step 2で選んだ投稿案(例:「手持ちのアイテムでできる広がりストップ術」)を元に、「投稿文作成ワークフロー」で「ミッション」と内容・トーンなどを指定します。
AIはターゲットの心に響く絵文字やハッシュタグを織り交ぜながら、魅力的なキャプションを複数パターン作成してくれます。
佐藤店長は、その中から一番しっくりくるものを選び、少し手直しするだけで投稿が完了します。
【佐藤店長の入力例:投稿文作成ワークフロー】
項目 | 入力ポイント | 佐藤店長の入力例 |
ミッション選択 | 事前に登録したプロジェクトの | Salon Aube 再活性化プロジェクト |
生成する投稿案のタイプ | 投稿の目的や内容に | ブランド/サービス/ |
複数結果生成 | 一度に複数の投稿文を | 3 |
補足キーワード/ (任意) | 投稿に含めてほしい | 髪の広がり/うねり/ |
内容の詳細(任意) | 「投稿案作成ワークフロー」で | 「手持ちのアイテムでできる広がりストップ術」というテーマで、 |
プラットフォーム | 投稿するSNSを指定します。 | |
文字数 | 最適な文字数を選択します。 | long(250〜400文字) |
文章のスタイル | 投稿のトーン&マナーを | プロフェッショナル |

Step 4: 動画で魅力を「直感的に伝える」
新メニューの「体験価値」を伝えるには、動画が最も効果的です。動画作成のハードルをAIが下げてくれます。
活用するAI
動画台本作成ワークフロー
実行アクション
「動画台本作成ワークフロー」を起動し、「ミッション」を選択。テーマとして「新メニュー『オーダーメイド髪質改善スパ』の紹介」と入力します。
AIは、ターゲットの興味を引くための動画構成、ナレーション、画面に表示するテロップ案まで含んだ台本を作成します。
【佐藤店長の入力例:動画台本作成ワークフロー】
項目 | 入力ポイント | 佐藤店長の入力例 |
プラットフォーム | どのプラットフォーム向けの | Instagram Reels |
動画テーマ・トピック | 動画で何を伝えたいのか、その核心を具体的に記述します。 | 新メニュー「オーダーメイド髪質改善スパ」の紹介。 |
トーン・スタイル | 動画全体の雰囲気やテイストを指定します。 | プロフェッショナルに |
目的・CTA(任意) | 視聴者に動画を見た後、 | 商品購入/申し込み/予約案内 |
ターゲット(任意) | どのような視聴者に向けた動画なのかを | 20代後半~30代の女性。 |
動画の長さ(任意) | 作成したい動画の長さを選択します。 | お任せ(自動) |

AIが作成した動画台本の例
開始5秒で「ビフォーアフター」の衝撃を見せて惹きつけ、本編では「マイクロスコープ診断」と「オーダーメイド調合」で専門性と特別感を演出します。
癒やしのスパ風景で心地よさを伝え、最後にお客様の感動リアクションと限定オファーで予約を強力に後押しする構成です。
【AI活用プロセスの成果】
これまで一人で抱え込み、負担に感じていたSNS運用が、AIという有能なパートナーを得たことで劇的に変わりました。戦略立案からネタ出し、文章作成までをAIがサポートしてくれるため、佐藤店長は「何を発信すべきか」ではなく「お客様に何を伝えたいか」という本質的な部分に集中できるようになりました。
一貫性のある質の高い発信を続けた結果、ターゲットである20代〜30代の女性からの「いいね」や「保存」が明らかに増加。
そしてついに、「Instagramを見て、髪の悩みを相談したくて…」という新規のお客様からの予約の電話が鳴ったのです。
SNS運用が「未来のお客様と繋がるための戦略的な楽しい活動」へと変わった瞬間でした。