美容院 Salon Aube 変革の物語 〜AIと共に歩む、地域で一番愛されるサロンへの挑戦〜(2)
売上頭打ちの美容室がAIで起死回生を狙います。客単価を上げる「キラーメニュー」開発の全手順を、リアルなAIへの入力例と共に解説します。
はじめに
前回の記事では、AIを活用してSalon Aubeの現状を客観的に分析しました。口コミやSWOT分析を通じて、長年の経験で培った「感覚」が「データ」という動かぬ事実に変わりました。その結果、お店の本当の強みである「高い技術力とリラックスできる空間」と、課題である「新規顧客へのアピール不足」、そしてお客様が潜在的に抱える「髪の悩みを解決してほしい」「新しい提案がほしい」というニーズが明確になりました。
今回の記事では、これらの分析結果を踏まえ、売上頭打ちの根本原因である「客単価の低迷」という課題の解決に挑みます。
漠然としたアイデア出しではなく、AIを戦略的パートナーとして、お店の強みを活かし、お客様のニーズに応える高付加価値な「キラーメニュー」を開発する具体的なプロセスを、ステップごとに解説していきます。
シミュレーションの舞台
会社名
Salon Aube (サロン・オーブ)
概要
開業10年を迎える、地域密着型の美容院。席数4席、スタッフ3名。丁寧な施術と落ち着いた雰囲気で長年の常連客に支持されているが、最近は周辺に新しいトレンドを取り入れたサロンが増え、競争が激化している。
登場人物
佐藤店長
自身もトップスタイリストとして現場に立つ、30代後半のオーナー兼店長。
技術には自信があるものの、時代に合わせた経営やマーケティングに課題を感じている。「今のままじゃダメだ…」と感じ、ITやAIの力で現状を打破したいと考えている。
悩み
常連客頼みで新規顧客(特に20代〜30代の若者層)がなかなか増えない。
客単価が上がらず、売上が頭打ちになっている。
SNS(Instagram)での情報発信が負担になっている。
何から手をつけて良いかわからない。
活用シーン2: 魅力創出フェーズ - 低迷を打破する「キラーメニュー」の企画と開発
【お店の課題】
現状把握フェーズで、Salon Aubeの高い技術力と落ち着いた空間が既存顧客から高く評価されていることが確認できました。
一方で、「客単価が頭打ち」という課題の根源は、お客様がリピート率の高いカットやカラー以外の、利益率の高いトリートメントやスパなどのメニューを積極的に選んでいないことにあると判明しました。
このフェーズでは、Step 1で明らかになった「髪の悩み解決」「新しい提案への期待」というニーズに応えつつ、客単価向上に直結する「キラーメニュー」をAIと共に具体的に開発します。
【AI活用プロセス】
Step 1: 高単価メニューのコンセプト設計
これまで経験と勘に頼っていたメニュー開発を、AIが客観的なデータに基づいてサポートします。
活用するAI
商品・メニュー開発プランナー
実行アクション
「商品・メニュー開発プランナー」を起動し、佐藤店長はお店の未来を想い描きながら、各項目に想いを込めて入力しました。
【佐藤店長の入力例:商品・メニュー開発プランナー】
項目 | 入力ポイント | 佐藤店長の入力例 |
自社 | お店の基本情報を | 開業10年の地域密着型ヘアサロン。 |
ジャンル・ | これから開発したい | 美容室/ヘアサロン/ |
強み・ | お店の「売り」を伝える、 | お客様一人ひとりの髪の悩みに向き合う |
使いたい主な素材・ | ターゲットに響きそうな要素や、 | 高濃度ケラチン、 |
ターゲット | ペルソナ(お客様像)を | 20代後半〜30代の働く女性。 |
目標価格帯・ | ビジネスとして成立させるための 売上から原価を引いたものが粗利益となり、 | 税込10,000円〜15,000円、 |
提供形態 | 提供するシーンを | 店内での施術のみ |

AI提案メニューの例
- 商品名:オーダーメイド髪質改善スパ90
- 概要:結合補修×脂質・たんぱく質補給×pHコントロールを組み合わせた完全オーダーメイドの髪質改善。
- キャッチコピー:髪も心も、根本から整う
Step 2: ターゲットに響くネーミングの決定
どんなに良いメニューでも、名前が魅力的でなければ伝わりません。SNSで拡散されやすい、訴求力の高いネーミングをAIに依頼します。
活用するAI
ネーミングアシスタント
実行アクション
Step 1で固まったメニューコンセプトを、より魅力的な言葉にするため、「ネーミングアシスタント」に以下のよう入力しました。
【佐藤店長の入力例:ネーミングアシスタント】
項目 | 入力ポイント | 佐藤店長の入力例 |
ネーミング 対象物 | これから名前を付けたい商品や サービスが「何であるか」を 記述します。 AIがネーミングの対象を 正確に理解するための 基本情報となります。 | マイクロスコープ診断付きの オーダーメイド髪質改善スパ・ トリートメントコース |
提供価値・ 特徴 | その商品やサービスが持つ一番の「売り」や、 お客様にとっての「嬉しいポイント」を 具体的に書き出します。 SWOT分析で明確になった 「強み」などを記入すると、 より的確なネーミング案が 期待できます。 | お客様一人ひとりの髪と 頭皮の状態を診断し、 最適な栄養成分を調合する パーソナライズ施術。 髪本来の美しさを引き出し、 癒やしのヘッドスパで心身ともに リフレッシュできる特別な体験。 |
ターゲット層 (任意) | 「誰に」その名前を届けたいのか、 具体的なお客様像を記述します。 ミッションで設定した ターゲット像を参考にしましょう。 | 20代後半〜30代の、 美意識が高く、 本質的なケアを求める女性。 |
トーン/イメージ (任意) | ネーミングに持たせたい 雰囲気や印象を選択します。 目指すブランドイメージに合った キーワードを入れることで、 AIが生成する名前の方向性を コントロールできます。 | 高級感 |
文字数(任意) | 希望する名前の長さを指定します。 覚えやすさやメニュー表での見栄えを考慮して設定すると良いでしょう。 | (指定なし) |
補足要素(任意) | その他のこだわりや要望を自由に入力します。 「〇〇という単語を入れたい」など、具体的なリクエストがあればここで指定します。 | 髪の悩みに合わせた最適なトリートメント成分を調合。ヘッドスパによるリラクゼーション効果も最大化し、技術力と癒やしを両立。 |
出力結果を見て、もう少し違う案っも見たい場合は、指示を出すと他の案も出力します。

AIによるネーミング案の例
- ネーミング案1:髪質改善ラボ PREMIUM
- ネーミング案2:MY HAIR RECIPE
- ネーミング案3:HAIR CONCIERGE
Step 3: 自信をもって提案できる価格戦略の策定
せっかく高付加価値なメニューを開発しても、価格設定に迷っていては効果的な提案はできません。AIに最適な価格設定を分析してもらいます。
活用するAI
価格戦略分析アシスタント
実行アクション
登録したミッションを選択し、「価格戦略分析アシスタント」に具体的な情報を入力します。
【佐藤店長の入力例:価格戦略分析アシスタント】
項目 | 入力ポイント | 佐藤店長の入力例 |
ミッション選択 | 事前に登録した プロジェクトの「ミッション」 を選択します。 | Salon Aube 再活性化プロジェクト |
価格を検討する サービスや商品の内容 | 価格を設定したい商品や サービスの名前を具体的に 入力します。 | マイクロスコープ診断付き オーダーメイド髪質改善スパ・トリートメント |
サービスや 商品の価格 | 検討している具体的な 価格(税込)を入力します。 | 12,000円(税込) |
競合他社の 参考価格 | 周辺の競合サロンが提供している 類似メニューの価格を具体的に 入力します。 | Aサロン:髪質改善トリートメント 9,800円、 Bサロン:プレミアムヘッドスパ 8,500円 |
自社紹介ページURL (任意) | 自社HPのURLを入力します。 | 自社HPのURL |
競合他社紹介ページURL (任意) | 競合他社のURLを入力することで、AIが価格以外の要素(雰囲気、コンセプト等)も比較します。 | 競合店HPのURL |
自社商品・ メニュー・ サービス紹介 (任意) | 新サービスの価値や こだわりを具体的に 記述します。 | マイクロスコープで頭皮と髪の状態を診断後、 お客様に最適な栄養分をその場で調合します。 フルフラットのシャンプー台で行うアロマヘッドスパで、 深いリラクゼーション効果も得られます。 |
他社商品・ メニュー・ サービス紹介 (任意) | 競合サービスの 価格以外の特徴を入力します。 | Aサロンは有名トリートメントシステムを導入し若者に人気。 Bサロンは完全個室でオーガニック製品を使用し、 リラクゼーションを重視している。 |

AIによる分析結果の例
A案(¥11,800)を主力価格とし、C案(¥9,900初回)で新規獲得、B案(¥12,800)で上位顧客を取り込む。
【AI活用プロセスの成果】
佐藤店長は、これまで曖昧だった新メニューのアイデアを、市場のニーズと技術力を組み合わせた具体的な「商品」として完成させることができました。
AIのサポートにより、メニュー名、価格、そしてお客様への提案トークまで一連の流れで準備が整い、「押し売り」ではなく「自信のある提案」として、高単価メニューを推進する準備ができました。
次はいよいよ、この新しい魅力をターゲット層に届けるための「情報発信」に取り組みます。