AIではじめる不動産DX:エース退職の危機を乗り越え、"仕組み"で勝つ組織へ(3)

Web知識ゼロの不動産会社がAIをWeb担当者にして、業務を効率化。サイト構築からSNS運用まで、AIで「届ける」仕組みを作る全プロセスを解説します。

AIではじめる不動産DX:エース退職の危機を乗り越え、"仕組み"で勝つ組織へ(3)
Photo by Brands&People / Unsplash

はじめに:完成した「作戦」を、お客様に「届ける」

前回の記事では、AIと共に会社の現状を分析し、エース個人の技に頼らない「相続不動産コンサルティング」という新しい事業の作戦を立てました。

しかし、どれほど素晴らしい戦略やサービスも、それを必要としているお客様に知ってもらわなければ、存在しないのと同じです。特に、Webサイトでの情報収集が当たり前になった今、デジタルを活用して自分たちの価値を「届ける」活動は、会社の生命線とも言えます。

このシーンでは、日々の業務に追われる山田社長が、AIを「Webマーケティングの専門チーム」として活用し、新しいサービスをターゲット顧客に届け、問い合わせを獲得していくプロセスを追っていきます。


シミュレーションの舞台

会社名: 山田不動産
概要: 開業7年目の地域密着型不動産会社。これまでエース営業マン一人の活躍でなんとか売上を維持してきた。
登場人物: 山田社長
悩み:
唯一無二のエース営業マンが大手競合に引き抜かれ、売上が激減。
特に利益率の高い「売却物件の専任媒介」を大手にことごとく奪われている。
残った社員のモチベーションも低下しており、会社の存続に強い危機感を抱いている。
何から手をつければいいのか分からず、感情的に焦る毎日を送っている。


活用シーン3: マーケティング実行フェーズ - 新しい価値を「届ける」

【会社の課題】

新しい事業の方向性は定まったものの、山田社長には大きな悩みがありました。それは、WebサイトやSNSなど、デジタルを使った情報発信のノウハウが全くないこと。

日々の業務や社員のマネジメントに追われ、ブログ記事を書いたり、SNSを更新したりする時間が確保できず、何から手をつければ良いかも分からない状態でした。

【AI活用プロセス】

Step 1: Webサイトを「待ち」から「攻め」の営業拠点に変える

まず、新サービスの受け皿となるWebサイトを整備し、ターゲット顧客に「私たちのサービスが、あなたの悩みを解決できます」と力強く伝えられるコンテンツを作成します。

活用するAI
Sensei AI (不動産)

実行アクション
まずSensei AI (不動産)に、Webサイトの構成案の作成を依頼します。

💭
「相続不動産のワンストップ相談サービスの魅力を伝えるWebサイトの構成案を作成して」

Webサイト構成案(骨子)

  • ホーム(トップページ)
    • 目的: 信頼獲得と「無料相談」への迅速な誘導
    • 要素: キャッチコピー、CTAボタン(無料相談・電話・LINE)、信頼バッジ、3つの強み、サービスフロー
  • サービス詳細ページ
    • 目的: ワンストップサービスの内容を具体的に理解させる
    • 要素: サービス段階別の説明、流れと期間、費用モデル、対象ケース紹介
  • 信頼構築ページ(チーム紹介)
    • 目的: 「顔の見える安心感」を伝え、専任媒介に繋げる
    • 要素: 担当者プロフィール、提携士業一覧、法人向け窓口
  • 事例・お客様の声
    • 目的: 実績で効果を証明し、疑似体験を提供する
    • 要素: 課題→解決→結果の構成、数値やビフォーアフターで可視化
  • 料金とプラン
    • 目的: 料金の透明性を示し、不安を払拭する
    • 要素: パッケージ例(無料相談・基本・フルサポート)、成功報酬や追加費用の明記
  • リソース(お役立ち情報)
    • 目的: SEO対策と見込み客の育成
    • 要素: FAQ、地域特化のコラム、ダウンロード資料(相続チェックリスト)
  • コンタクト(問い合わせ)
    • 目的: 申し込みのハードルを最大限に下げる
    • 要素: 最小限の入力フォーム、即時対応窓口(電話・LINE)

Step 2: ターゲットに届くブログ記事で専門家としての信頼を築く

Webサイトの構成案が完成したら、次は前回作成したペルソナのような悩みを抱える人が検索しそうなキーワードで有益な情報を発信し、未来の見込み顧客を集めます。

活用するAI
ブログ記事作成ワークフロー

実行アクション
ブログ記事作成ワークフローは、AIとの対話形式で高品質な記事を3ステップで作成できる強力なツールです。

1. 初期設定を行う
まず、ワークフローを起動し、以下の項目を設定します。

項目

入力・選択例(山田社長が設定)

ミッション選択

山田不動産「地域と未来をつなぐ相続サポート事業」

文字数

SEO対応・解説記事(2,000〜3,000文字)

文章のスタイル

専門的・論理的

2. AIとの対話で記事を作成する
「作成する」ボタンを押すと、AIとの対話画面が始まります。

① タイトル作成
AIはミッションの内容から、ブログタイトル候補を複数提案します。
提案された中から、使いたいタイトルをコピーし貼り付け、または自分が考えたタイトルを入力し送信します。

② アウトライン設計
選んだタイトルに基づき、AIが詳細アウトラインなどを複数提案します。

内容を確認し、
「候補案③で、売却時の税金について、もっと詳しく説明する項目を追加してほしい。」
といった指示を出すことで、より網羅的な構成に仕上げます。

③ 本文執筆
確定したアウトラインに沿って、AIが本文を自動で執筆します。ターゲットに寄り添い、信頼感が伝わる丁寧な言葉遣いで、分かりやすく説得力のある文章がスピーディーに完成します。

Step 3: SNSで潜在顧客との接点を作り、関係を構築する

ブログと並行し、SNSを活用してより幅広い層に会社の存在を知らせ、地域での信頼関係を構築します。

活用するAI
SNS運用戦略プランナー, 投稿文作成ワークフロー

実行アクション
1. SNS運用の全体計画を立てる

まずSNS運用戦略プランナーを使い、戦略の骨子を立案します。
「相続Q1:よくある誤解」「売却成功事例(数値付き)」といった投稿テーマのカレンダーや、具体的なKPI(目標数値)が設定され、計画的な運用が可能になります。

項目

入力のポイント

入力例(山田社長が入力)

ミッション選択

あらかじめ設定した
ミッションを選択します。

山田不動産 再起プロジェクト

プラットフォーム

主なターゲット層が利用している
プラットフォームを選択します。

Instagram

運用期間

戦略を実行する
具体的な期間を設定します。

2025-09-01 - 2025-11-30

投稿数

無理なく継続できる
投稿頻度を指定します。

週2回(火曜・金曜)

広告予算(任意)

広告を活用する場合の
予算を記入します。

月3万円

キャンペーン/
特別施策(任意)

期間中にSNSで宣伝したいイベントが
あれば記載します。

相続・空き家対策 無料相談会の告知

2. 日々の投稿文を効率的に作成する
次に、計画に沿った日々の投稿を投稿文作成ワークフローで作成します。

項目

入力のポイント

入力例(山田社長が入力)

ミッション選択

あらかじめ設定した
ミッションを選択します。

山田不動産 再起プロジェクト

生成する
投稿案のタイプ

投稿の目的を
AIに伝えます。

最新情報・お知らせ

複数結果生成

一度に生成したい
投稿案の数を指定します。

3

補足キーワード/
参考情報(任意)

投稿に含めてほしい
重要な単語を指定します。

相続, 空き家,
税金, 無料相談,
専門家, 地域密着

内容の詳細
(任意)

伝えたい内容や背景を
具体的に記述します。
詳しく書くことで、
より意図に近い文章が生成されます。

今週末の土日に開催する「相続・空き家対策 無料相談会」の告知文を作成してほしい。
予約制で、提携する税理士も同席する点がポイント。
気軽にご相談いただきたいという想いを伝えたい。

プラットフォーム

どのSNSに投稿するかを
指定します。

Instagram

文字数

生成される文章の長さを
指定します。

long(250〜400文字)

文章のスタイル

文章のトーン&マナーを
指定します。
「プロフェッショナル」
「フレンドリー」など、
ブランドイメージに
合わせます。

プロフェッショナル

「作成する」ボタンを押すだけで投稿文が複数パターン生成され、文章作成の手間を大幅に削減できます。

【AI活用プロセスの成果】

これまで全く手付かずだったデジタルマーケティングが、驚くほど効率的かつ戦略的に実行できるようになりました。

AIが「Web担当者」兼「ライター」の役割を担うことで、山田社長はコンテンツの最終チェックをするだけで、質の高い情報発信が可能に。結果、Webサイトからの問い合わせ件数が月平均で3倍に増加し、ブログ記事を読んだお客様からの「専門的な話が聞きたい」という質の高い相談も増え始めました。

会社の新しい価値が着実に顧客に届き始め、社員のモチベーションも大きく向上しました。