飲食店での活用:AIとの二人三脚で、お店を再生するためのステップ(2)

お店の現状が見えたら、次はAIと「勝つための作戦」を立てるフェーズです。「誰に」「何を」「いくらで」提供するのか、感覚ではなくデータで裏付けられた戦略を立てましょう。 AIを活用すれば、狙うべき顧客像(ペルソナ)の明確化から、ターゲットに響く新メニュー開発、最適な価格設定までを一貫してサポート。「なんとなく」の意思決定から脱却し、成功確率の高い事業計画を具体化するステップをご紹介します。

飲食店での活用:AIとの二人三脚で、お店を再生するためのステップ(2)
Photo by Jay Wennington / Unsplash

はじめに:
課題の「見える化」から、勝つための「作戦」へ

前回の記事では、AIを活用して売上データや口コミを分析し、お店が抱える課題を客観的なデータとして「見える化」しました。

しかし、課題が分かっただけではお店は変わりません。重要なのは、その事実に基づいて「次に何をすべきか」という具体的な戦略を立てることです。

この記事では、シリーズ第2弾として、続く「活用シーン2:戦略立案フェーズ」を解説します。AIと共に、ターゲット顧客の再設定から新メニュー開発、価格設定まで、勝つための「作戦」を立てていくプロセスを、モデルケースである山田オーナーの挑戦に沿って見ていきましょう。


登場人物

山田オーナー:
とある街で飲食店を経営して5年。料理の腕には自信があるが、最近は売上が頭打ち。
「今のままじゃダメだ…」と感じ、ITやAIの力で現状を打破したいと考えている。

悩み

常連客頼みで新規顧客が増えない。メニューがマンネリ化している。
何から手をつけて良いかわからない。


活用シーン2:
戦略立案フェーズ - 勝つための「作戦」を立てる

【お店の課題】

お店の現状が明らかになり、改善すべき点が見えてきました。
しかし、具体的にどのようなお客様をターゲットに、どんな商品を提供し、いくらで売るべきか、感覚で決めて失敗することは避けたいところです。
事実に基づいた、成功確率の高い戦略を立てる必要がありました。

【AI活用プロセス】

【準備】AIの提案精度を上げる「マイミッション」を登録しよう

具体的な戦略を立てる前に、非常に重要な準備があります。それは、AIに「私たちのお店が目指す方向性」を教え込む「マイミッション」の登録です。

📝
ホーム画面右上のプロフィールアイコンから「設定」を選択 して、左側のメニューから「マイミッション」を選択し、「追加」をクリックすることで登録画面を開くことができます。

これを登録しておくことで、AIはあなたのお店の「羅針盤」を理解し、これから行う全ての提案(ペルソナ作成、ターゲットリスト作成、コンテンツマーケティングなど)に一貫性を持たせることができます。
一度設定すれば、mitsumonoAIの活用が格段にスムーズになります。

今回は、山田オーナーが入力した以下の内容を参考に、各項目で何を考えるべきかを見ていきましょう。

1. ミッション名
今回のプロジェクトに分かりやすい名前をつけましょう。

💡
山田オーナーの入力例:
山田食堂 再起動プロジェクト

2. ミッション・ビジョン(軸となる価値観)
あなたのお店が、お客様に提供したい根本的な価値や、お店の「志」を言葉にしましょう。

💡
山田オーナーの入力例:
心のこもった一皿で、働くあなたの"もうひと頑張り"を応援する。

3. 目的(販促テーマ等)
前回の分析結果を踏まえ、「このプロジェクトで何を達成したいのか」を具体的に書きます。

💡
山田オーナーの入力例:
AI分析で導き出した新メニュー「働く私のリセットランチ」を軸に、これまで来店が少なかった近隣オフィスの女性客を獲得する。

4. ターゲット
「誰に」喜んでもらいたいのか、お客様の顔を具体的に思い浮かべて絞り込みます。

💡
山田オーナーの入力例:
近隣オフィスに勤務する20代〜30代の女性。健康や食事のバランスを意識している。

5. コアメッセージ・USP(独自価値提案)
「なぜ、他のお店ではなくウチなのか?」という、競合にはない一番の強み(売り)を書き出します。

💡
山田オーナーの入力例:
5年間常連に愛されたプロの料理人が、本気であなたの健康を考えて作る、美味しいヘルシーランチ。一度食べたら忘れられない、本格的なのにどこかホッとする味。

このように、お店の軸となる考えを事前にAIと共有しておくことで、この後のAIからの提案が、よりあなたのお店の状況にフィットしたものになります。

Step 1: ターゲット顧客の再設定

まず、誰に喜んでもらいたいのか、お店が目指すべきお客様像を明確にします。

活用するAI
ペルソナ作成アシスタント

実行アクション
現状分析で見えた「近隣オフィスの増加(チャンス)」と「女性客の少なさ(弱み)」から「最近増加した近隣オフィスで働く女性」をターゲットリストに入力します。
AIはこれらの情報から、お店がこれから狙うべき具体的なお客様像(ペルソナ)を作成します。

作成されたペルソナ例
28歳/女性/IT企業のマーケティング担当/東京都内在住/一人暮らし など。

Step 2: 新メニューの開発

新しいお客様に響く、魅力的な商品を開発します。

活用するAI
商品・メニュー開発プランナー

実行アクション
お店の「強み(料理の腕)」と、新しく設定した「お客様像」のニーズをAIにインプット。AIは、具体的なコンセプトから調理法まで含んだ、新メニュー案を提案します。

項目

入力のポイント

入力例

自社プロフィール

お店の基本情報を入力します。

AIがお店の背景や立ち位置を理解するために重要です。

創業5年、地域に根差した定食屋。

プロの料理人が作る本格的な味で、長年の常連客に愛されている。

ジャンル・カテゴリー

これから開発したいメニューの方向性を指定します。

ランチプレート、ヘルシーメニュー、ワンプレート

強み・アピールポイント

お店の「売り」を伝える、メニューコンセプトの核となる部分です。

前回のSWOT分析で明らかになった自社の「強み」を活かす視点で、具体的に入力しましょう。

化学調味料に頼らず、出汁から丁寧に取る手作りの味。

長年の経験を持つ料理人の技術を活かした、本格的な味わい。

使いたい主な素材・食材・技術

ターゲットに響きそうな要素や、お店として使ってみたい素材を入力します。

鶏むね肉、キヌア、アボカド、彩り豊かな季節野菜、低温調理技術

ターゲット

Step1で設定したペルソナ(お客様像)を参考に入力します。

近隣オフィスに勤務する20~30代の女性。

健康や美容への関心が高く、ランチにも栄養バランスや見た目の良さを求める。

目標価格帯・原価率

ビジネスとして成立させるための価格と原価の条件です。

一般的に飲食店の原価率は30%前後が目安とされます。

売上から原価を引いたものが粗利益となり、お店の利益の源泉となるため、現実的な数値を設定しましょう。

税込1,300円前後、原価率28%以内

提供形態

提供するシーンを具体的に指定することで、より現実的な提案が期待できます。

平日ランチタイム限定、店内飲食のみ

提案されたメニュー例
商品名:グリーンキヌア・チキンプレート
キャッチコピー:映える、満たす、ヘルシー。

Step 3: 魅力的なネーミングを決める

開発した新メニューの価値を最大限に高める名前を決定します。

活用するAI
ネーミングアシスタント

実行アクション
ネーミングアシスタントが、ターゲットの心に響くような、覚えやすく魅力的なメニュー名を複数提案します。

項目

入力のポイント

入力例

ネーミング対象物

何の名前を考えたいのかを具体的に入力します。

メニューのコンセプトや特徴が簡潔に伝わるように書くと、

AIの提案精度が上がります。

グリーンキヌア・チキンプレート

提供価値・特徴

メニューがお客様に提供する価値や、他にはない特徴を具体的に記述します。

味、見た目、健康面など、多角的な視点で魅力を伝えることが重要です。

高たんぱく低脂質の鶏むね肉、スーパーフードのキヌアやアボカドなど

彩り豊かな野菜を使い、自家製発酵ドレッシングで腸活・美肌サポート。

罪悪感なく満腹を叶える働く女性向けワンプレート。

ターゲット層(任意)

誰に届けたいメニューなのかを明確にします。

ペルソナ作成アシスタントで設定した人物像を参考にすると、

よりターゲットに響く名前が期待できます。

20代〜30代健康美容志向の近隣オフィス勤務女性

トーン/イメージ(任意)

名前に持たせたい雰囲気や世界観を指定します。

高級感

文字数(任意)

希望する名前の長さを指定します。

覚えやすさやメニュー表での見栄えを考慮して

設定すると良いでしょう。

10文字以内のカタカナ。アルファベット表記も添えたい。

補足要素(任意)

その他のこだわりや要望を自由に入力します。

「〇〇という単語を入れたい」など、具体的なリクエストがあればここで指定します。

フランス語やイタリア語のような、おしゃれな響きを希望。

意味合いとして「緑」や「健康」「大地」といった要素を含めたい。

決定した戦略
メニュー名は「Verdéa Plate (ベルディア プレート)」

Step 4: 適切な価格設定

競合他社の価格も参考に、新メニューの適切な価格を決定します。

活用するAI
価格戦略アシスタント

実行アクション
価格戦略アシスタントが、新メニューの価値や周辺のお店の価格などを考慮し、お客様が納得し、かつお店の利益も確保できる最適な価格を算出します。

項目

入力のポイント

入力例

ミッション選択

あらかじめ設定したミッションを選択します。

山田食堂 再起動プロジェクト

価格を検討するサービスや

商品の内容

商品・メニュー開発プランナーで考案した、

価格を決めたい新メニューの概要を具体的に入力します。

Verdéa Plate (ベルディア プレート)。

低温調理チキンとキヌア、彩り野菜を使ったヘルシーランチプレート。

サービスや商品の価格

自身で設定した目標価格を入力します。

AIはこの価格が市場や提供価値に対して妥当かを分析します。

1,299円(税込)

競合他社の参考価格

周辺エリアで競合となるお店の、類似メニューの価格を具体的に入力します。

市場での価格帯をAIに学習させます。

Aカフェ:1,250円、

Bベーカリー:1,400円

自社紹介ページURL

(任意)

自社HPのURLを入力します。

お店全体のコンセプトや雰囲気を伝える重要な情報源となります。

自社HPのURL

競合他社紹介ページURL

(任意)

競合店のURLを入力することで、

AIが価格以外の要素(雰囲気、コンセプト等)も比較し、分析の精度が高まります。

競合店HPのURL

自社商品・メニュー・

サービス紹介(任意)

新メニューの価値やこだわりを具体的に記述します。

素材、調理法、コンセプトなど、価格の根拠となる情報を伝えましょう。

厳選鶏むね肉を低温調理で仕上げ、10種の野菜とキヌアを使用。

栄養と満足感を両立した、手作りドレッシングが自慢の一皿。

他社商品・メニュー・

サービス紹介(任意)

競合メニューの価格以外の特徴(量、質、店の雰囲気など)を入力します。

価格差の背景をAIが理解する助けになります。

Aカフェはオーガニック野菜が売りだが量は少なめ。

Bベーカリーはおしゃれな内装でパンが食べ放題。

決定した戦略
価格は付加価値を考慮した1,299円に設定。

【AI活用プロセスの成果】

これまでの「なんとなく」で決めていた商品開発から脱却し、「誰に」「何を」「いくらで」提供するのか、全ての要素がデータで裏付けられた一貫性のある戦略を立てることができました。 これにより、施策の成功確率が飛躍的に高まり、お店が進むべき道筋が明確になりました。