飲食店での活用:AIとの二人三脚で、お店を再生するためのステップ(2)
お店の現状が見えたら、次はAIと「勝つための作戦」を立てるフェーズです。「誰に」「何を」「いくらで」提供するのか、感覚ではなくデータで裏付けられた戦略を立てましょう。 AIを活用すれば、狙うべき顧客像(ペルソナ)の明確化から、ターゲットに響く新メニュー開発、最適な価格設定までを一貫してサポート。「なんとなく」の意思決定から脱却し、成功確率の高い事業計画を具体化するステップをご紹介します。
はじめに:
課題の「見える化」から、勝つための「作戦」へ
前回の記事では、AIを活用して売上データや口コミを分析し、お店が抱える課題を客観的なデータとして「見える化」しました。
しかし、課題が分かっただけではお店は変わりません。重要なのは、その事実に基づいて「次に何をすべきか」という具体的な戦略を立てることです。
この記事では、シリーズ第2弾として、続く「活用シーン2:戦略立案フェーズ」を解説します。AIと共に、ターゲット顧客の再設定から新メニュー開発、価格設定まで、勝つための「作戦」を立てていくプロセスを、モデルケースである山田オーナーの挑戦に沿って見ていきましょう。
登場人物
山田オーナー:
とある街で飲食店を経営して5年。料理の腕には自信があるが、最近は売上が頭打ち。
「今のままじゃダメだ…」と感じ、ITやAIの力で現状を打破したいと考えている。
悩み
常連客頼みで新規顧客が増えない。メニューがマンネリ化している。
何から手をつけて良いかわからない。
活用シーン2:
戦略立案フェーズ - 勝つための「作戦」を立てる
【お店の課題】
お店の現状が明らかになり、改善すべき点が見えてきました。
しかし、具体的にどのようなお客様をターゲットに、どんな商品を提供し、いくらで売るべきか、感覚で決めて失敗することは避けたいところです。
事実に基づいた、成功確率の高い戦略を立てる必要がありました。
【AI活用プロセス】
【準備】AIの提案精度を上げる「マイミッション」を登録しよう
具体的な戦略を立てる前に、非常に重要な準備があります。それは、AIに「私たちのお店が目指す方向性」を教え込む「マイミッション」の登録です。
これを登録しておくことで、AIはあなたのお店の「羅針盤」を理解し、これから行う全ての提案(ペルソナ作成、ターゲットリスト作成、コンテンツマーケティングなど)に一貫性を持たせることができます。
一度設定すれば、mitsumonoAIの活用が格段にスムーズになります。
今回は、山田オーナーが入力した以下の内容を参考に、各項目で何を考えるべきかを見ていきましょう。

1. ミッション名
今回のプロジェクトに分かりやすい名前をつけましょう。
山田食堂 再起動プロジェクト
2. ミッション・ビジョン(軸となる価値観)
あなたのお店が、お客様に提供したい根本的な価値や、お店の「志」を言葉にしましょう。
心のこもった一皿で、働くあなたの"もうひと頑張り"を応援する。
3. 目的(販促テーマ等)
前回の分析結果を踏まえ、「このプロジェクトで何を達成したいのか」を具体的に書きます。
AI分析で導き出した新メニュー「働く私のリセットランチ」を軸に、これまで来店が少なかった近隣オフィスの女性客を獲得する。
4. ターゲット
「誰に」喜んでもらいたいのか、お客様の顔を具体的に思い浮かべて絞り込みます。
近隣オフィスに勤務する20代〜30代の女性。健康や食事のバランスを意識している。
5. コアメッセージ・USP(独自価値提案)
「なぜ、他のお店ではなくウチなのか?」という、競合にはない一番の強み(売り)を書き出します。
5年間常連に愛されたプロの料理人が、本気であなたの健康を考えて作る、美味しいヘルシーランチ。一度食べたら忘れられない、本格的なのにどこかホッとする味。
このように、お店の軸となる考えを事前にAIと共有しておくことで、この後のAIからの提案が、よりあなたのお店の状況にフィットしたものになります。
Step 1: ターゲット顧客の再設定
まず、誰に喜んでもらいたいのか、お店が目指すべきお客様像を明確にします。
活用するAI
ペルソナ作成アシスタント
実行アクション
現状分析で見えた「近隣オフィスの増加(チャンス)」と「女性客の少なさ(弱み)」から「最近増加した近隣オフィスで働く女性」をターゲットリストに入力します。
AIはこれらの情報から、お店がこれから狙うべき具体的なお客様像(ペルソナ)を作成します。
作成されたペルソナ例
28歳/女性/IT企業のマーケティング担当/東京都内在住/一人暮らし など。
Step 2: 新メニューの開発
新しいお客様に響く、魅力的な商品を開発します。
活用するAI
商品・メニュー開発プランナー
実行アクション
お店の「強み(料理の腕)」と、新しく設定した「お客様像」のニーズをAIにインプット。AIは、具体的なコンセプトから調理法まで含んだ、新メニュー案を提案します。
項目 | 入力のポイント | 入力例 |
自社プロフィール | お店の基本情報を入力します。 AIがお店の背景や立ち位置を理解するために重要です。 | 創業5年、地域に根差した定食屋。 プロの料理人が作る本格的な味で、長年の常連客に愛されている。 |
ジャンル・カテゴリー | これから開発したいメニューの方向性を指定します。 | ランチプレート、ヘルシーメニュー、ワンプレート |
強み・アピールポイント | お店の「売り」を伝える、メニューコンセプトの核となる部分です。 前回のSWOT分析で明らかになった自社の「強み」を活かす視点で、具体的に入力しましょう。 | 化学調味料に頼らず、出汁から丁寧に取る手作りの味。 長年の経験を持つ料理人の技術を活かした、本格的な味わい。 |
使いたい主な素材・食材・技術 | ターゲットに響きそうな要素や、お店として使ってみたい素材を入力します。 | 鶏むね肉、キヌア、アボカド、彩り豊かな季節野菜、低温調理技術 |
ターゲット | Step1で設定したペルソナ(お客様像)を参考に入力します。 | 近隣オフィスに勤務する20~30代の女性。 健康や美容への関心が高く、ランチにも栄養バランスや見た目の良さを求める。 |
目標価格帯・原価率 | ビジネスとして成立させるための価格と原価の条件です。 一般的に飲食店の原価率は30%前後が目安とされます。 売上から原価を引いたものが粗利益となり、お店の利益の源泉となるため、現実的な数値を設定しましょう。 | 税込1,300円前後、原価率28%以内 |
提供形態 | 提供するシーンを具体的に指定することで、より現実的な提案が期待できます。 | 平日ランチタイム限定、店内飲食のみ |
提案されたメニュー例
商品名:グリーンキヌア・チキンプレート
キャッチコピー:映える、満たす、ヘルシー。
Step 3: 魅力的なネーミングを決める
開発した新メニューの価値を最大限に高める名前を決定します。
活用するAI
ネーミングアシスタント
実行アクション
ネーミングアシスタントが、ターゲットの心に響くような、覚えやすく魅力的なメニュー名を複数提案します。
項目 | 入力のポイント | 入力例 |
ネーミング対象物 | 何の名前を考えたいのかを具体的に入力します。 メニューのコンセプトや特徴が簡潔に伝わるように書くと、 AIの提案精度が上がります。 | グリーンキヌア・チキンプレート |
提供価値・特徴 | メニューがお客様に提供する価値や、他にはない特徴を具体的に記述します。 味、見た目、健康面など、多角的な視点で魅力を伝えることが重要です。 | 高たんぱく低脂質の鶏むね肉、スーパーフードのキヌアやアボカドなど 彩り豊かな野菜を使い、自家製発酵ドレッシングで腸活・美肌サポート。 罪悪感なく満腹を叶える働く女性向けワンプレート。 |
ターゲット層(任意) | 誰に届けたいメニューなのかを明確にします。 ペルソナ作成アシスタントで設定した人物像を参考にすると、 よりターゲットに響く名前が期待できます。 | 20代〜30代健康美容志向の近隣オフィス勤務女性 |
トーン/イメージ(任意) | 名前に持たせたい雰囲気や世界観を指定します。 | 高級感 |
文字数(任意) | 希望する名前の長さを指定します。 覚えやすさやメニュー表での見栄えを考慮して 設定すると良いでしょう。 | 10文字以内のカタカナ。アルファベット表記も添えたい。 |
補足要素(任意) | その他のこだわりや要望を自由に入力します。 「〇〇という単語を入れたい」など、具体的なリクエストがあればここで指定します。 | フランス語やイタリア語のような、おしゃれな響きを希望。 意味合いとして「緑」や「健康」「大地」といった要素を含めたい。 |
決定した戦略
メニュー名は「Verdéa Plate (ベルディア プレート)」
Step 4: 適切な価格設定
競合他社の価格も参考に、新メニューの適切な価格を決定します。
活用するAI
価格戦略アシスタント
実行アクション
価格戦略アシスタントが、新メニューの価値や周辺のお店の価格などを考慮し、お客様が納得し、かつお店の利益も確保できる最適な価格を算出します。
項目 | 入力のポイント | 入力例 |
ミッション選択 | あらかじめ設定したミッションを選択します。 | 山田食堂 再起動プロジェクト |
価格を検討するサービスや 商品の内容 | 商品・メニュー開発プランナーで考案した、 価格を決めたい新メニューの概要を具体的に入力します。 | Verdéa Plate (ベルディア プレート)。 低温調理チキンとキヌア、彩り野菜を使ったヘルシーランチプレート。 |
サービスや商品の価格 | 自身で設定した目標価格を入力します。 AIはこの価格が市場や提供価値に対して妥当かを分析します。 | 1,299円(税込) |
競合他社の参考価格 | 周辺エリアで競合となるお店の、類似メニューの価格を具体的に入力します。 市場での価格帯をAIに学習させます。 | Aカフェ:1,250円、 Bベーカリー:1,400円 |
自社紹介ページURL (任意) | 自社HPのURLを入力します。 お店全体のコンセプトや雰囲気を伝える重要な情報源となります。 | 自社HPのURL |
競合他社紹介ページURL (任意) | 競合店のURLを入力することで、 AIが価格以外の要素(雰囲気、コンセプト等)も比較し、分析の精度が高まります。 | 競合店HPのURL |
自社商品・メニュー・ サービス紹介(任意) | 新メニューの価値やこだわりを具体的に記述します。 素材、調理法、コンセプトなど、価格の根拠となる情報を伝えましょう。 | 厳選鶏むね肉を低温調理で仕上げ、10種の野菜とキヌアを使用。 栄養と満足感を両立した、手作りドレッシングが自慢の一皿。 |
他社商品・メニュー・ サービス紹介(任意) | 競合メニューの価格以外の特徴(量、質、店の雰囲気など)を入力します。 価格差の背景をAIが理解する助けになります。 | Aカフェはオーガニック野菜が売りだが量は少なめ。 Bベーカリーはおしゃれな内装でパンが食べ放題。 |
決定した戦略
価格は付加価値を考慮した1,299円に設定。
【AI活用プロセスの成果】
これまでの「なんとなく」で決めていた商品開発から脱却し、「誰に」「何を」「いくらで」提供するのか、全ての要素がデータで裏付けられた一貫性のある戦略を立てることができました。 これにより、施策の成功確率が飛躍的に高まり、お店が進むべき道筋が明確になりました。
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